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サイロ展望台からの映像解析による隆起量の検討

アジア航測 藤田浩司

2000/04/17作成

噴火前後の映像から作成したGIFアニメーション

 有珠山の噴火開始以来、毎日のようにサイロ展望台に設置された固定カメラからの映像を見ていて、「そういえば最近西山の火口が見えるようになってきた」ことに気がつきました。最初の3/31噴火のときには、稜線の向こうでした。もちろん、少し近い別の火口が活動しているためでもあるのですが、火口周辺が隆起していることも原因のひとつのようです。
 そこで、噴火前(1997/05/01)に藤田が撮影した写真と、2000/04/16のNHK画像を重ね合わせ、地形の変化をアニメーションにしてみました。噴火前の写真は、偶然にも撮影位置はサイロ展望台のほとんど同一地点と考えられ、カルデラ崖や湖岸線の形状が一致しています。
 このアニメーションをみると、稜線の形状の変化から、かなり広い範囲で隆起していることが確認できます。火口が見えるようになってきたのは、単に火砕丘が成長しただけではないということになります。このページでは、この画像をもとに、火口周辺の隆起量の算定を試みました。


■2000年3月31日以前(噴火前)の有珠山
 有珠山は、洞爺カルデラの南部に噴出した複合火山である。有珠山の北方、洞爺湖の対岸に位置するサイロ展望台からは、山頂部のカルデラ中に成長した、大有珠・小有珠・有珠新山のドーム群や山麓を取り囲むようにしてできあがった、昭和新山・四十三山(よそみやま、明治新山)・金比羅山・西山などのドームを一望する事ができる(写真-1、図-1)。

写真-1 噴火前の有珠山(1997年5月1日にサイロ展望台から藤田撮影)

サイロ展望台からは、西山の山麓はもちろん、ごみ焼却場の煙突部分もみえていない

図-1 サイロ展望台からの展望図(イメージ)
国土地理院発行の「数値地図データ」から作成した地形モデル(50mメッシュ)に、国土地理院発行の「地図画像25000」と判読図(藤田作成)をテクスチャーマッピングして作成した。(カシミール3D使用)


■2000年4月16日現在の地形状況
サイロ展望台と西山火口群、ごみ焼却場の位置関係を図-2に示す。地形データは噴火前ものであり、わかりやすくするために、視点の高度を2000mまで上げて示した。この図から、サイロ展望台から見た西山火口群の方向は、洞爺湖畔にある水門の方向と、ほぼ一致する事が理解できる。また、ごみ焼却場の方向は、学校の建物と洞爺カルデラのカルデラ壁上にある204mピークとの間に位置する。

図-2 サイロ展望台の上空2000mからの展望イメージ

写真-2に示したのは、4月16日の11時30分ごろのサイロ展望台のNHK定点カメラの映像をキャプチャーしたものである。噴火中の火口の周囲に、火砕丘が成長しているのが確認できる。また、映像の左端に見える白い塔のようなものは、焼却場の煙突ではないかと思われる。この煙突は、噴火前の映像では全く確認できない。ゴミ焼却場の位置する地盤が隆起した結果、見えるようになったと考えられる。


写真-2 サイロ展望台からみた西山火口群(2000年4月16日
学校の背後に西山火口群の火砕丘が見えている。
画像の左端付近、↑の先にある白い塔はごみ焼却場の煙突。


■噴火前〜2000年4月16日までの地盤隆起量の推定
 4月16日のNHK映像だと、西山山麓の火砕丘はカルデラ壁にある小丘とほぼ同じ高さに、ごみ焼却場はカルデラ壁上にある204mピークの上方に見える。そこで、これらの2点間をそれぞれ結ぶ地形断面図を作成した(図-3,4)。

図-3 サイロ展望台とごみ焼却場付近との地形断面図
(国土地理院発行の50mメッシュのDEMを用いて、カシミール3Dで作成。)

図-4 サイロ展望台と西山火口群付近との地形断面図

(国土地理院発行の50mメッシュのDEMを用いて、カシミール3Dで作成)

図-3の断面図に示したように、ごみ焼却場がNHK映像のように見えるためには、煙突の頂部がおよそ210m程度の高さになっている必要がある。噴火前のごみ焼却場の標高は約160mであるから、仮に煙突の高さを20mとすると、その標高は180mとなり、およそ30mの隆起量が必要となる。
 一方、西山山麓の火砕丘のベースの高さがカルデラ壁と同じになるには、その標高が160m程度に達している必要がある。この付近の噴火前の標高は115〜120mであるから、隆起量はおよそ40〜45mと計算される。


■結論
サイロ展望台の定点カメラ映像の比較により、西山火口付近の隆起量を推定した。噴火前(1997年5月1日)から4月16日までの隆起量は、ごみ焼却場付近で約30m、西山山麓で40〜45mと推定された。


■謝辞
本検討は、日本放送協会(NHK)が4月16日にサイロ展望台から撮影・放映した、ニュース画像をキャプチャーした画像を使用して検討したものである。ここに記して、お礼申し上げる。また、国土地理院発行の、数値地図・地図画像データを使用した。図幅名は、キャプション中に明記した。


HTML版編集(千葉達朗)