(社)土木学会 火山工学研究小委員会第2分科会報告書より HTMLバージョン(1998/04/13作成)
日本列島には86の活火山があり、例年のように噴火や火山災害が繰り返されている。1997年にも秋田焼山の水蒸気爆発や安達太良山での火山ガス事故などの災害があったが、その頻度の割には、正しい理解が不足していると思われる。火山災害や事故を防止するという観点から、さらに一般への啓蒙を進める必要がある。自然災害のなかで火山災害の特徴を考えると、突然発生するという点では地震災害等と類似するが、影響範囲が特定の地域に限られるという点では洪水などの災害と類似している。また、火山噴火の種類は多く、その種類ごとに災害の質や規模も大きく異なる。ここでは、これまでに発生した世界の火山災害を概観し、その統計的な特徴を紹介する。また、噴火の種類によってどのような災害が発生するのかについて、いくつかの実例を上げながら概観するものである。Key Words: volcano, disaster, hazard, eruption
火山災害とは、火山活動に関連して生じる災害のことであり、噴火によって直接もたらされる狭義の火山災害と、火山地域特有の地質による災害の2つに分類される。また、物理的被害と社会的・経済的被害という区分もある。
1.1 死亡原因からみた火山災害
過去に発生した世界の火山災害について、その統計的な特徴を整理した。表1.1は、西暦1600年以降の火山災害による死者数を、Tilling(1989)が、災害の要因別に集計したものである。ここでの火山災害には、津波や飢饉・疫病も含まれており、17-19世紀には際だって多い。しかし、20世紀に入ってからは、火砕流と岩屑なだれ、火山泥流による犠牲者が多くなっている。このような特徴は、それぞれ特定の噴火によって大量の犠牲者が出たことの反映であり、時代が変わって、火山噴火傾向が変化したものではない。
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火砕流・岩屑なだれ |
18,200 |
( 9.8%) |
36,800 |
(48.4%) |
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火山泥流・洪水 |
8,300 |
( 4.5%) |
28,400 |
(37.4%) |
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降下火砕物・噴石 |
8,000 |
( 4.3%) |
3,000 |
( 4.0%) |
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津 波 |
43,600 |
(23.4%) |
400 |
( 0.5%) |
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噴火後の飢饉・疫病 |
92,100 |
(49.4%) |
3,200 |
( 4.2%) |
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溶岩流 |
900 |
( 0.5%) |
100 |
( 0.1%) |
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火山ガス・酸性雨 |
--- |
--- |
*1,900 |
(2.5%) |
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その他・原因不明 |
15,100 |
( 8.1%) |
2,200 |
( 2.5%) |
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合計 |
186,200 |
(100%) |
76,000 |
(100%) |
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年平死者数 |
620 |
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880 |
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火山の噴火様式とその特徴を、表1.3に示す。噴火様式は、火砕物を伴う噴火とマグマ水蒸気噴火(水蒸気爆発)の2種類に分けられる。また、火砕物を伴う噴火は、マグマが火砕物とガスの混合物として噴出する場合、噴火様式はマグマの性質や噴火のメカニズムによっていくつかのタイプに識別される。
アイスランド式やハワイ式の噴火は、玄武岩質のマグマが線状の割れ目から大量に噴出し広大な範囲に流出するもので爆発的ではなく日本には少ない。
ストロンボリ式の噴火は、間欠的にマグマ噴泉に上げる特徴があり、火口周囲に火丘を形成することが多い。
ブルカノ式は、粘性が高いために、爆発的な噴火をする。玄武岩〜安山岩質マグマが、激しい爆発によって粉砕され、火山灰やスコリアや軽石となって放出されるほか、溶岩流や火砕流を伴う。
プリニー式の噴火は、珪酸分に富むマグマ(安山岩質〜流紋岩質マグマ)が連続的かつ大量に噴出する爆発的噴火で、噴煙柱は成層圏まで達することがある。噴出物は風に運ばれ、降灰となる場合もあるが、噴煙柱が崩壊するなどして火砕流として流下する場合もある。
また、体積が10km3を越えるような大規模火砕流が発生した場合には、火山体そのものが粉砕されるだけでなく、空洞となったマグマだまりが不安定となって崩壊、カルデラを形成することも、地質学的な時間スケールではまれではない。
マグマに地下水などの外来水が加わった場合、水が水蒸気に相変化することによって著しく体積が膨張する(約1,000倍)。そのため、噴火様式は爆発的になる。これを、マグマ水蒸気噴火という。ただし、水の量とマグマの量が、どちらかが圧倒的に多い場合には爆発的ではなくなる。適当な、割合で混合することが重要である。最も激しい爆発を起こすのは、体積比で高温のマグマの30%程度になったときである。
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活動の特徴 |
噴出物の特徴 |
地形・構造 |
実 例 | |
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火砕物を伴う噴火 |
アイスランド式 |
広域割れ目から多量の溶岩流出。 |
パホイホイ溶岩・アア溶岩。初期に火山砕屑物が少量噴出。 |
溶岩台地。 砕屑丘。 |
ラキ1783年 アスキァ 1961年 |
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ハワイ式 |
山頂及びリフトゾーンの割れ目から溶岩流出。 |
パホイホイ溶岩・アア溶岩・溶岩泉の活動を伴うが爆発的ではない。 |
盾状火山。 キラウエア型カルデラ。 |
マウナロア1942年 キラウエア1983年〜 | |
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ストロンボリ式 |
中心噴火。小爆発をおこし半溶融状態の溶岩塊を噴出。 |
紡錘状火山弾・スコリア・火山灰のほか、ときにパホイホイまたはアア溶岩を噴出。 |
成層火山。 砕屑丘。 |
ストロンボリ三原山1986年 | |
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ブルカノ式 |
中心噴火。激しい爆発。ときに火砕流を伴う。爆発の間隔は一般に長い。 |
火山岩塊・パン皮火山弾・軽石・火山灰、最後に塊状溶岩を噴出することもある。 |
成層火山。 砕屑丘。マグマの粘性が高いと溶岩ドーム。 |
ブルカノ 1888〜90年 浅間山、桜島 | |
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プリニー式 |
中心噴火。長い休止期の後に極めて激しい爆発的爆発。 |
多量の軽石・火山灰、時に火砕流を伴う。マグマの文化作用顕著。 |
成層火山。 砕屑丘。大規模なときはカルデラ。 |
ベスビオAD79年 ピナツボ 1991年 | |
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マグマ水蒸気噴火 |
マグマと地下水や海水の接触による激しい爆発。ときに火砕サージを伴う。 |
火山体を構成していた岩片を主体として、一部にマグマ起源の岩片を含む。 |
大きな火口。タフリング。マール。 |
三宅島1983年 | |
火山災害は多岐にわたるが、災害を引き起こす噴火現象に基づいて分類するのがわかりやすい。以下に、これらの災害要因とそれによって引き起こされる種々の災害についてその特徴や事例を解説する。
噴出岩塊の落下とは、火口で起こる爆発により、火山弾や火山岩塊が高速で噴出され、空中を飛行して着地する現象をいう。初速度が100m/sを越える場合も少なくなく、直径1mの岩塊が2kmも飛んで落下するケースも珍しくない(図2.1)。多くの場合、噴出岩塊の放出落下は、いわゆるブルカノ式噴火と呼ばれる爆発的噴火、あるいは水蒸気爆発やマグマ水蒸気爆発によるものである。

火砕物の降下とは、火口から高く吹上げられた噴煙柱の中に含まれる火山灰や軽石が上層風に流されて火山の周辺や風下側の広い範囲に降下する現象をいう。小規模なものは噴煙柱が対流圏の中だけにとどまり、噴出物は地表から数kmまでの高さの風に流されるが、大規模なものは成層圏にまで達し、広範囲に降下する。プリニー式噴火とよばれる大型の噴火では、降下火砕物の総量が10億トンを越える場合もある。そのような場合は、成層圏に入った火山灰やエアロゾルが地球を繰り返し周回し、地球的規模の気侯に影響を与えるといわれる。
落下する火砕物による災害は火口に近い地域で起りやすいが、火口から遠い地域でも多量の火山灰の重みで建物が倒壊する場合もある。降下火砕物が厚く堆積すると、交通・農業をはじめ、生活や経済活動に重大な支障を与える。微細な火山灰は成層圏を飛行するジェット機のエンジンに入り込み、熱で溶けてガラス膜を作り急激にエンジン停止にいたらしめることもある。
写真2.1,2は1996年の北海道駒ヶ岳の水蒸気爆発の降下火砕物分布である。わが国のような中緯度地方では偏西風に流されるため、火口から東へ細長くのぴる楕円状の分布を示す例が多いが、当日の風向は北西風であったため、南東方向に伸びている。


溶岩流とは、火口から噴出した溶岩が高い粘性の流体として重力により山麓の低所に向かって流下するものである。溶岩流の通過域では農地、林地、住宅地などを埋積し、焼失させる。流下する溶岩のタイプはふつうパホイホイ溶岩、アァ溶岩および塊状溶岩の3種に分類される。3種類の溶岩内部構造を図2.3.1に模式的に示した。
玄武岩質溶岩が地表に噴出して間もない時期は高温であり、含まれるガス成分の量も多いので粘性が低く、パホイホイ溶岩を生じやすい。溶岩噴泉の基底部から流出するパホイホイ溶岩流はきわめて薄く、多くは2m以下の厚さで板状で波のようにうねり、表面は滑らかである。玄武岩質の溶岩の温度がさらに低下すると溶岩の表面は小さなとげが密集した粗い凹凸に富んだ状態になる。同時に、直径数cmくらいの団塊(クリンカー)が多量に生じて溶岩流全体をスッポリ覆ってしまう。これがアア溶岩である。さらに温度が低下し粘性が増大すると、溶岩流の表面を覆う岩塊は大型(径数十Cm以上)になり、また平滑な破断面で囲まれた多面体の形をとるようになる。これは塊状(ブロック)溶岩とよばれる。塊状溶岩は玄武岩質の溶岩流には少なく、安山岩質、デイサイト質、流紋岩質のものに最もふつうにみられる。これらのタイ’プの溶岩流ははっきりと区分されるものではなく、互いに漸移することが多い。最近のわが国の代表的な溶岩流災害は、1914年の桜島大正噴火、1983年の三宅島噴火(写真2−4−3)、1986年の伊豆大島の噴火などがある。溶岩流は比較的ゆっくり流下するため、避難することが可能で、過去にも大きな人的被害は出ていない。
火砕流災害と一口に言っても、規模が非常に大きなものから小規模なものまであり、災害の質・次元が全くことなる。大規模火砕流とは体積10km3以上のものをさす。九州の姶良カルデラや阿蘇カルデラを生じたような大噴火である。小規模の火砕流は発生頻度が高いので、防災上特に重要である。中間型火砕流とは、両者の間の規模のものをさす。
小規模の火砕流は発生の機構から3種類に区分される。これは、揮発成分の割合によって規定される。(1)メラピ型:一旦溶岩ドームが形成され、それが崩壊して火砕流となる。(2)プレー型:溶岩ドームの一部が爆発して火砕流となる。(3)スフリエール型:噴火によって火口の上空に形成された噴煙柱が崩壊し、火砕流となる。山麓のあらゆる方向に広がる。以下に、メラピ型火砕流災害の事例として、1990-95年雲仙岳噴火を紹介する。
1990年11月17日にはじまった雲仙岳噴火は、当初水蒸気爆発であったが徐々にマグマ性となり、1991年5月20日からは地表にマグマが直接顔を出す溶岩ドーム形成活動が始まった。ドームは、やがて火口縁からあふれ谷底に落下をはじめ、大きな噴煙をあげた。最初の火砕流が発生したのは5月24日であった。 6月3日には、溶岩ドームの大半が既存の山体の一部とともに地すべり的な崩壊を起こした。発生した火砕流は滝を越えたところで再爆発、その爆風(火砕サージ)が北上木場地区の高台に達し43名が亡くなった。崩壊によってできた馬蹄形の窪地には、新ドームが形成され、6月8日に再び崩壊した。この時、さらに大きく山体がえぐられたため火道が直接露出、マグマ的な爆発をともなった(プレー型)。発生した火砕流は熱風を伴い、広い範囲に火災を発生させた(写真2.3、図2.2)。


その後は、1995年の5月まで、溶岩ドームの形成とその崩壊による火砕流の発生がくりされた。1991年9月15日にも溶岩ドームが北東方向急成長し、火砕流が発生し、4.5kmの距離を流下した(写真2.5)。1992年末には噴出率がいったん低下したが、1993年はじめから再び増加、1993年6月23・24日に千本木、6月26日に水無川方向へ大きな火砕流が発生した。 下流域に被害をもたらすような大火砕流は、溶岩ドームが基盤も巻き込んで、地すべり的な大崩壊をした際に発生している。
溶岩ドームを構成する岩石の空隙(気泡)中には、過剰な圧力を持った火山ガスが閉じこめられている。それが崩落の際の衝撃などで一気に解放され、「自爆」することが火砕流流動の鍵となったと思われる。 自爆粉砕する際には、流路にあたる谷の表面の地質が重要な役割を果たしており、岩盤が堅いほど効果的に自爆を誘発する。写真2.4に示したのは、発生直後の崖錐部分ではあまり爆発せず、岩盤と衝突した後に大爆発している例である。このような爆発が連鎖的・連続的に続くと遠方にまで達する火砕流となると考えられる 。


雲仙岳噴火では、1991年6月3日、9月15日の火砕流にともない、火砕サージが発生している。特に、6月3日の火砕流は、43名の死者・行方不明者を出す災害となった。写真2.6は1991年6月3日の火砕サージによる、植物の被害状況である。高温の砂を含んだ熱風によって、ほとんどのものがなぎ倒されている。

写真2.5は1991年9月15日に発生した火砕サージ。この風紋をもつ大量の砂質堆積物は、一旦堆積した火砕流の表面から吹き上げられ、周辺に堆積したもの。

溶岩流とは、火口から噴出した溶岩が重力により山麓の低所に向かって流下するものである。溶岩流の通過域では農地、林地、住宅地などを埋積し、焼失させる。流下する溶岩のタイプはふつうパホイホイ溶岩、アア溶岩およびブロック状溶岩の3種に分類される。国内の代表的な溶岩流災害は、1914年の桜島大正噴火、1983年三宅島噴火、1986年伊豆大島噴火などである。溶岩流は比較的ゆっくり流下するため、避難することが可能で、過去にも大きな人的被害は出ていない。
1986年11月21日の伊豆大島三原山の割れ目噴火では、カルデラ内に長さ約1kmのカーテン状の溶岩噴泉が形成され、高さは最大1500mに達した。このB火口列の噴泉から落下したマグマは、一旦火砕丘を形成したが、その勾配によっては持ちこたえられずに、再び溶岩流となって流下した。図2.4では、火砕丘が変形し、溶岩流に移行している状況が読み取れる。カルデラ外に生じたC火口列のC6火口からは、あふれ出すように溶岩流が流れだしたが、元町へ200mの地点で停止した(図2.5)。島民は、約1ヶ月間の島外避難生活を余儀なくされたが、全員無事であった。

火山ガスとは、マグマ中に含まれる揮発成分が噴気口や火口から噴き出すものである。ほとんどが水蒸気であるが、有毒成分も含まれ、その濃度によっては、生物に致命的な被害を与える。特に、二酸化イオウ、硫化水素、塩素、二酸化炭素などは有毒である。1986年カメルーンのニオス湖では、CO2で、短時間に1700人もの死者が出ている。
国内でも、1997年の7月12日に、CO2ガスで八甲田山で訓練中の自衛隊員が3名、9月には安達太良山で硫化水素ガスによって登山客が4名が亡くなるという事故があったことは記憶に新しい。ここでは、特に安達太良山火山ガス災害について写真を紹介する。
1997年9月15日午前、福島県にある安達太良山の沼ノ平火口で、火山ガスによって14名のパーティーの内4名が亡くなるという事故があった。
沼ノ平火口では、1900年の噴火で硫黄鉱山の採掘所が直撃を受け、火砕流の熱風によるやけどなどで72名の死者が出ている。現在、沼ノ平火口は周辺からの土砂流入で完全に埋め立てられ、平坦地となっている。昭和40年頃まで稼働していた硫黄鉱山の残骸がわずかに往時を偲ばせるだけであった。
ところが、最近、1996年9月1日に沼ノ平火口の中央部で噴泥が発生したり、沼ノ平火口内の地熱地域が拡大するなど、活発化の兆候がではじめ、地元測候所から注意が呼びかけられ、登山道入り口にも看板が表示されていた。
今回の災害を引き起こしたH2S(硫化水素ガス)は、目に見えず、空気より比重が大きいために、窪地などに貯まって、極めて高い濃度になることがある。このガスは数100ppm程度の濃度になると、短時間で意識がなくなる。これまでにも 草津白根山や、立山などで、多くの事故を起こしている危険なガスである。専門家は、以下のような注意をしている。
『もし、いわゆる「卵の腐った臭い」を強く感じたときは、ただちに高い場所に移動する。水で湿したタオルを口に当てるとガスマスク代わりになる。ただし過信は禁物。調査の時には工業用の硫化水素用のガスマスクを着用するべき。特に注意しなければならないのは、危険なほど高濃度になると、「卵の腐った臭い」を感じなくなる点である。』
一行は15日午前6時半ごろ、沼ノ平の入り口から登山を開始。沼ノ平の入り口にさしかかったところで霧のために道に迷い、まっすぐ進むべきところを、進行方向右側に尾根が見えたので、道のないところをやみくもに尾根方向に向かった。尾根の近くになってはじめて登れないれないことがわかり、引き返すことにした。そのときちょうど霧が一瞬晴れ、沼ノ平を横断しているルートが見えた。今来た道なき道を戻るより、正しいルートにはやくたどり着こうと、思い思いにショートカットをして沼ノ平を目指した。火山ガスのために植生が全くないから、どこでも歩こうと思えば歩ける。ただ、尾根伝いに降りて行くと最後が崖になるので、徐々に沢へと降りていったところで悲劇が起こった(写真2.7)。
その付近はガスの異臭がして(16日の測定では200ppm)、最初の2人は「ガスだ」と言いながら駆け抜けたが、そのあとに続いていた3人の中年女性が次々に倒れた。 3人を助けようと駆け付けた中年女性も倒れた。残ったメンバーの1人(中年男性)が息を止めて助け起こそうとしたが、かがんだ瞬間に呼吸困難になり、危険を感じたため退避、かろうじて三重遭難は避けられた。
アマチュア無線で救助を求め、 通報を受けた救助隊が、ガスマスク携帯の上、救出に向かったのは同日午前11時半すぎ。県警のヘリコプターも出動したが、霧のために着陸できず、先遣隊7人が現場に到着したのは午後2時半ごろだった(写真2.9-11)。




火山泥流は流速が速く、きわめて破壊的で、これまで多数の災害を発生させている。流速は60km/hに達し、到達距離は100km以上になることがある。火山泥流は、噴火時に火山噴出物が火口湖の水や山頂の積雪と混じって、泥流化するタイプ。噴火により火山灰などが斜面に新しく堆積し、そこに豪雨が加わった場合に、二次的に発生するタイプがある。
1985年コロンビアのネバド・デル・ルイス火山で発生した泥流は、山麓のアルメロの町を襲い、火山災史上最悪の約25,000人の死者を出した。この火山泥流は、一部溶結するほどの火砕流が、山頂部の氷帽の一部を急速に融かしたため発生した。
日本国内の火山泥流災害では、1926年十勝岳の事例が有名である。中央火口丘が爆発により崩壊、急速な融雪型火山泥流が発生した。泥流は約流速60km/hで流下し、多量の流木を含む鉄砲水となって山麓を襲い、2ヶ村を埋没させ、144名の犠牲者を出した。
降雨による二次的な泥流や土石流の発生事例としては、桜島の野尻川が有名である。ここでは、桜島南岳の噴火による降下火山灰と降雨によって、年平均20回程度の土石流が発生している。また、1993年5月ごろ、雲仙岳噴火で堆積していた火山灰や火砕流堆積物が降雨によって土石流となって山麓に流下し、下流部で氾濫し大きな被害を出した(写真2.12)。

岩屑なだれは、火山体を構成している火山砕屑物や溶岩などが火山活動や地震などによって大規模に崩壊し、高速で流下する現象である。1980年セントヘレンズ火山噴火では、大規模な山体崩壊が発生、30kmの距離地点にまで達した。速度は最高150m/sに達した。磐梯山1888年の活動では小磐梯山の北半分が崩壊し、総計1.2km3におよぶ崩壊物が北麓に流下し、461名の死者がでた。この岩屑なだれは、河川を堰き止め桧原湖・小野川湖・秋元湖などを生じさせた。このように、山体崩壊は頻度としては少ないが、大規模な災害となるので、注意が必要である。
山体崩壊や岩屑なだれほど大規模ではなくても、火山を構成する不安定な物質が地震や豪雨が引きがねとなって、地すべりや斜面崩壊が発生することがある。有珠山では1977〜79年にマグマの上昇による地殼変動で外輪山壁がせり出したため、斜面崩壊が多発した。火山体周辺の斜面崩壊の例としては、秋田焼山北東斜面で、1997年5月11日に発生した、八幡平鹿角市澄川温泉の地すべりがあげられる。これは、温泉変質によって基盤岩が著しく粘土化し、その粘土層をすべり面として地すべりが発生したものである。地滑りにともない水蒸気爆発が発生し、崩壊土砂が岩屑なだれや土石流となって2km下流に達した。
岩屑なだれや火砕流が湖水や海へ流入したり、水底で噴火が発生した場合、津波が引きおこされる可能性がある。わが国で最大のものは1792年の雲仙岳の活動によるもので、強い地震と同時に眉山で大崩壊が起こり、岩屑が有明海に流れ込み、津波を発生させた。このため島原だけでなく、対岸の肥後・天草にまで被害が及び、死者約15,000名を出した。
火山活動にともなって火山体およびその周辺で地殻変動が観測されることがある。1944-45年の昭和新山の形成や有珠新山形成の際には、周辺地域での地盤の垂直・水平変動が著しく、多数の断層・亀裂・波状変形が生じ、地上および地下の構造物が破壊された。このように、粘性の大きいデイサイト質マグマの活動の場合には、クリープ的な地殻変動をする場合がある。
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