写真 3 Us-b付近のテフラ層序と降下年代
写真左のスケールは約65 cm.
写真 2 調査地点において観察される主なテフラと降下年代
写真中央のスケールは約94 cm.
写真 1 苫小牧市錦岡におけるトレンチ写真
写真左のスケールは1 m.
図 1 苫小牧市錦岡の位置と周辺における16世紀以降に活動した主な火山
『多数の火山噴火を記録する露頭』
■錦岡西方の白老から苫小牧に掛けての低地には,有珠火山の1663年噴火の降下軽石層(Us-b)が分布することは古くから知られていましたが,それ以外に,北海道駒ケ岳火山からの火山灰層,Us-b以外の有珠火山からの火山灰層,それにこの地域のすぐ北方に位置する樽前火山からの軽石・火山灰がきれいに認められました(写真
2).
■写真 2の下部に見られる褐色を呈する軽石層は厚さ30cmほどあり,上述の有珠火山の1663年噴火で飛来したものです.堆積後の地下水による汚染によってその上部の軽石の表面は褐色になっていますが,内部は真っ白な軽石です.軽石層の直上にはウグイス色の薄い火山灰層が見られます(写真
3).有珠山に近づくとこの火山灰層はずっと厚くなり広く認められます.また,写真
2のスケールのトップ付近に波状に堆積している粗粒な軽石層は,樽前山の1874年の噴火によってもたらされた軽石(Ta-Va0)です.
2008年8月に行った北海道南部巡検では,苫小牧市西部,錦岡において低地の調査をおこないました(図
1).その際,深さ1mほどのごく小さな掘り込み穴に多数の火山灰や軽石が層を成しているのが見つかりました(写真
1).
■Us-bと樽前火山1667年噴火の火山灰(Ta-b)の間には,4年間しか間がないので,ほとんど土壌形成の跡が認められません.Ta-bの上には厚さ約5cmの黒色土壌があり,その土壌中には厚さ約5mmの駒ケ岳1694年噴火によってもたらされた白色火山灰層(Ko-c2)が存在します.
Ko-c2をはさむ土壌の上には,樽前山1739年噴火による,細かな軽石を含む火山灰層(Ta-a)が存在します.樽前山の1739年噴火は,樽前山の東方に分厚い軽石層を堆積させた大規模な噴火でした.しかし,樽前山の南に位置する錦岡は降下火砕物の分布の主軸から外れているため,Ta-aの厚さはごく薄いことがわかります.
■このように,錦岡付近では北海道南部の代表的な火山灰が良く保存されているので,上記の火山灰のほかにも,数多くの火山灰が含まれている可能性があります.つまり錦岡付近は,16世紀以降に活発な火山活動を何回もおこなった,駒ケ岳,有珠山,樽前山の噴火の歴史を明らかにするための最適な調査地点の一つであると言えます.
そこで,調査時に多くの試料を採取し(写真 4),現在様々な分析を継続中です.また,主要な火山灰層が視覚的に把握しやすいこと,貴重な露頭であることから,2008年9月には地層のはぎ取りをおこないました.
■以上のように,駒ケ岳,有珠山,樽前山周辺では数多くの火山灰が保存されているので,地層に時間の目盛りを詳細に入れていくことが可能です.このような調査を集積することで,火山噴火が自然環境や人間活動にどのような影響をもたらすのかを詳細に解明することが可能です.これらの結果に基づけば,火山災害を減ずるための様々な知恵が生まれることでしょう.
鈴木正章1)・遠藤邦彦2)・近藤玲介2)
(1)道都大学 (2)日本大学
地層のはぎ取り方法についてはコチラのページをご覧ください
写真 4 錦岡における巡検/調査風景
鈴木正章,遠藤邦彦,佐藤昭夫,古川竜太,鈴木 茂,細野 衛,中村賢太郎(2007):
北海道,白老平野における縄文海進期以降の沖積層の堆積過程.日本第四紀学会講演要旨集,37,P84-85.
●参考文献