三宅島2000年噴火の山頂地形とその噴出物(改訂版)
(Update on 14 July 2000, revise on 27 January,2002.)

大野希一 ・中田節也 ※※ ・笹井洋一 ※※・長井雅史 ※※・森 博一 ※※※
日本大学文理学部
※※
東京大学地震研究所
※※※
気象庁

はじめに
  2000年7月8日午後6時41分,三宅島の雄山が山頂噴火を起こした.またこのイベントをきっかけに,雄山山頂の火口周辺が大きく陥没した.噴火は翌7月10日(?),14日未明にも起こり,島内に降灰をもたらした. 我々は噴火の翌日,2000年7月9日に現地入りし,地上および上空から三宅島の雄山山頂付近の地形観察と,噴火によってもたらされた降灰の分布域に関する調査を行った.なお,今回の現地調査にあたり,海上保安庁,気象庁三宅島測候所, および三宅島在住の方々には多大なる便宜を図って戴きました.篤く御礼申し上げます.
調査概要
  雄山登山道周辺,および上空から山頂付近の地形観察を行った. また,主に一周道路沿いにおいて,2000年7月8日に降下した火山灰の堆積産状や分布域,および定面積あたりに降下した火山灰を採取した.
  ・山頂地形
    写真5〜18は,海上保安庁の航空機から見た雄山山頂の様子である. 今回のイベントにより,山頂が円筒状に大きく陥没した.陥没した領域は直径750 〜 800m,落差平均100m程度で,最大落差は200m近くに達すると思われる. この陥没により,火口の西北西側斜面 は大きく崩壊したが,1940年の噴火によって形成されたとされる火口東側の火砕丘は原形をとどめたまま落ち込んでいる. この火砕丘は今回噴出した火山灰によって覆われており,またその火砕丘の北側に認められるピークも火山灰によって覆われている.火山灰の分布域の幅と陥没カルデラの直径がほぼ一致すること,また火口内部の原地形がほぼそのままの状態で保存されていることから判断すると,今回の噴火で噴出した火山灰はある特定の火口から噴出したというよりは,陥没するカルデラの周囲に形成された割れ目系から環状もしくは面的に噴き出したものと推定される.
雄山の東側斜面は,噴出した火山灰によって明褐色に変色している.特に,雄山東側斜面の標高700m以上の領域は,灌木等が火山灰によって完全に埋められていることから, 山頂付近の火山灰の層厚は少なくとも1mに達すると推定される.
  ・噴石
    今回形成された陥没火口の南西約200mにある登山道終点の駐車場には, 今回の噴火によって飛来した噴石がアスファルトにめり込んでいる. 噴石の大きさは直径約50cmで,最大のものは1.5mに達する. 噴石は標高約690mの登山道沿いにも認められた.
  ・降下火山灰
   

今回の噴火で噴出した降下火山灰は,淡い赤褐色を呈する. 火砕物のほとんどは,細粒粒子が付着しあった直径数ミリ程度の集合火山灰からなり, 指先でつぶすと粉々に砕けてしまう.一部の集合火山灰は著しく偏平に変形した状態で地面に付着している.このことから,火山灰のごく一部は水分を多く含んだ泥雨状で降下したものと考えられる.一見した限りでは,本質マグマに由来する物質らしきものは認められない.晴天下で発生した噴火であったにもかかわらず,火山灰のほとんどが凝集していたこと,そしてその中にはしばしば大量の水を含んでいた痕跡が認められたことから判断すると,今回の三宅島2000年7月8日に発生した噴火は,噴火様式で言えば水蒸気爆発にあたるものと推定される.
この噴火によってもたられた火山灰のアイソパックマップをこちらに示す.火山灰はほぼ真東に向いた細い分布軸を持つ.このアイソパックから見積もられる降灰量はおよそ99万立法メートル(およそ66万トン.堆積密度を1500kg/m3と仮定.2001年10月22日版)である.


その他の情報につきましては, 東京大学地震研究所のページ を御参照下さい.なお,写真をクリックすると大きな画像になります.


写真1 三池港からみた三宅島雄山

三池港から見た雄山.山頂付近の褐色部は火山灰の堆積域. 三宅島三池港(2000.7.9早朝).

写真2 陥没した三宅島雄山山頂部2

カルデラ内部には,1940年噴火で生じたスコリアコーンが,ほぼ原型を留めた状態で落ち込んでいる(2000.7.9,午前8時頃).

写真3 噴石1

複数の噴石がアスファルトにめり込んでいる.雄山山頂火口西.登山道駐車場(2000.7.9,午前8時頃)

写真4 噴石2

今回の噴火によって飛来した噴石.直径約50cm.雄山山頂火口西の登山道駐車場(2000.7.9,午前8時頃)

写真5 山頂の状況1

東より火口をのぞむ.山頂が大きく陥没している.写真手前側,雄山の東側斜面は降灰によって褐色に変色している.カルデラの直径と火山灰の分布域の幅がほぼ一致することから,火山灰は単一の火口からというより陥没に伴って形成されたカルデラ周囲の割れ目系から環状もしくは面的に噴き出したものと推定される (2000.7.9).

写真6 山頂の状況2

東北東より火口をのぞむ.カルデラ北西側の地滑り地形がよく見える.火口の東側斜面(画面左下)は,降灰により褐色に色づいている(2000.7.9).

写真7 山頂の状況3

上の写真とほぼ同様のアングル(2000.7.9).

写真8 山頂の状況4

西北西より火口をのぞむ.カルデラ内には1940年に形成されたスコリアコーンが,ほぼ原形をとどめたまま落ち込んでいる(2000.7.9).

写真9 山頂の状況5

上の写真とほぼ同様のアングル(2000.7.9).

写真10 山頂の状況6

西南西方向からカルデラをのぞむ.カルデラ内部のスコリアコーンがきれいにみえる(2000.7.9)

写真11 山頂の状況7

写真右下に見える四角いスペースが,写真4と5に示した噴石を確認した駐車場(2000.7.9).

写真12 山頂の状況8

ほぼ真上よりカルデラ内部をみる(2000.7.9).

写真13 山頂の状況9

カルデラの東側斜面をのぞむ(2000.7.9).

写真14 山頂の状況10

カルデラの南東側斜面.7/8噴火の降灰の分布限界がわかる.火山灰が厚く堆積している所では植生が埋没している(2000.7.9).

写真15 山頂の状況11

カルデラ東側は今にも崩れ落ちそう(2000.7.9).

写真16 山頂の状況12

カルデラ東側斜面の火山灰の堆積状況(2000.7.9).

写真17 山頂の状況13

カルデラ北東壁(2000.7.9).

写真18 山頂の状況14

ほぼ真上からみた三宅島のカルデラ内.写真中央は1940年噴火のコーン.コーンの斜面にはうっすらと植生が残っている(2000.7.9)

写真19 降下火山灰1
今回の噴火によって降下した火山灰.火山灰は赤褐色を帯びる.大部分が細粒粒子が付着しあった凝集火山灰からなり,その直径は数ミリにおよぶ.三池北,一週道路沿い(2000.7.9) .
写真20 降下火山灰2

今回の噴火によって降下した凝集火山灰.凝集粒子は最大で1cm以上にも及ぶ.三宅島三池西(2000.7.9).

写真21 降下火山灰3

今回の噴火によって降下した凝集火山灰.植生の間に入り込んでいる.三宅島三池西(2000.7.9).


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